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第13章 恋奈の異変

所長達が事務所に戻ってから、既に1時間は過ぎただろうか。

恋奈は未だに目が覚めていない。

大丈夫なんだろうか。

このまま目が覚めないなんて事、ないよな?

俺は不安になって恋奈を背負うと、事務所に向かった。

古いビルの急な階段は、恋奈を背負ってだと結構キツイものがある。

恋奈は軽い方だけど。

俺の運動不足のせいだろうなぁ。

エッチをする時の体力には自信があるんだけどな。

俺が、5階まで登ったところで、上から人が下りて来た。

ハナさんだった。

「遅いから心配で来てみたら…。まだ起きてないの?」

「はい。俺もそれで心配になって、所長に視て貰おうかと…」

「そっか。代わるよ。あたしが背負ってやる」

「え?大丈夫なんですか?」

「ああ。あたし、怪力だから」

そう言ってハナさんが笑った。

しかし、幾ら怪力でも女性にそんな事をさせる訳にはいかない。

「大丈夫っす!俺の彼女だし、あと1フロアくらい、上り切ってみせますよ!」

俺はそう言って笑ってみせた。

ハナさんは鼻で笑ってくれちゃったけど、『じゃあ、頑張れ!』と言って俺の尻を叩いてくれた。

痛ぇ!

怪力と言うのは強ち嘘じゃないのかも…。

それでも何とか上り切ると、ハナさんが事務所の扉を開けてくれた。

所長が事務机の椅子に正座して部屋の真ん中でクルクルと回っている。

「何やってんすか?」

「ん───?考え事…」

「そんな事より、恋奈が目を覚まさないんすよ!視て貰えませんか?」

「もうちょっと待って…」

そう言いながら、まだクルクルと回っている所長。

変な考え事の仕方だな。

俺は恋奈をソファに下ろすと、所長の考え事が終わるまで、所長の事を見ながら待つしかなかった。

ずっと見ていると、所長は右回りに9回まわると、今度は左回りに9回まわる。

それを何回か繰り返した後、ピタっと止まり立ち上がった。

「ゴメン、待たせた」

そう言って俺達に近付いて来る。

「ねぇ?ハナの中に彼女居ない?」

「う~ん?私に分かる訳ないじゃん」

「だよね~?でも、何でだろう?俺が抜いたのは、彼女のお姉さんだけだった筈なのに…」

首を傾げる所長。

「まさか、お姉さんに魂を捧げた後なんじゃないでしょうね?」

「それはないと思うよ?でもおかしいなぁ…」

そう言って再び所長は首を傾げた。

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