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第13章 恋奈の異変

「ずっとは無理だけど、ある程度であれば、抑え込む事は可能だよ。だから普段は封印してある」

そう言うと所長は箱を包んでいた布や鎖にチラっと視線を移す。

なるほど。

厳重に包まれていたのはそう言う訳なんだな。

「因みに、俺は”魔力”って物は信じてないから」

所長は水晶を取り出しながら、そう言った。

「けど、”人の念”は確かに存在する。それを操る術を知っている者を”魔術師”と呼んでいるに過ぎないと俺は思ってるけどね」

「だから、魔女はハロウィンの時にゾンビやら骸骨と一緒にされるって事?」

「ああ、そうなのかもね」

「じゃあ、所長も魔術師?」

「う~ん?そもそも日本には妖術師の概念はあったけど、『魔導士』『魔術師』とかっている概念はなかったからねぇ。

悪い霊を使役すれば『妖術師』、良い霊を使役すれば『陰陽師』みたいな感じだったんじゃないのかな。

俺の場合は…どっちなんだろうな?」

そう言うと所長はニンマリと笑った。


所長。

その笑顔が怖いです…。


唯、一つ言える事。

所長は悪霊を使役しているとは言っているが、その力を悪用はしておらず、良い事の為に使っているみたいだから、妖術師ではない!

俺はそう思う。

「ふふっ。有難い事を言ってくれるねぇ?」

俺の心の声を聴いたのか、所長はそう言うと先程とは違う、優しい笑みを浮かべた。

「とりあえず、恋奈さんの事を何とかしよう!」

そう言うと所長はポンと俺の肩を叩いて、恋奈が横たわるソファの前に座る。

俺には何も出来ない。

唯、祈る事くらいしか。

恋奈が戻って来てくれるように。

俺は乙女ばりに胸の前で指を絡ませ祈る様に恋奈を見つめる。

所長は水晶珠を握った手を恋奈の額に翳し、目を閉じて集中し始めた。

俺は邪魔にならないように、息を呑んでそれを見守る。

早く…。

戻って来てくれよ!

恋奈!!

お前の可愛い声でまた『アキちゃん』って呼んでくれよ!

頼むから、目を覚ましてくれ!!




……

……………

どれくらいの時間そうやっていただろうか。

所長がパッと目を開いた。

何か分かったのか!?

俺は所長のところまで歩いて、彼の目線に合わせる様に座り込む。

所長は少し青白い顔で『不味い事になってるかも知れない』そう言った。


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