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第13章 恋奈の異変

小一時間程経った頃だろうか。

バタバタと音を立てて所長が戻って来た。

手に何かを携えて。

「それ、何ですか?」

何かを包んでいる布を解いている所長に尋ねると、彼は『ん~?』と言って俺を見る。

「これ?これは黒魔術の道具…らしい」

そう言いながら、布に視線を戻すと所長はそれを解いていく。

『らしい』って何だよ。

俺は心の中でそう突っ込まずにはいられない。

恋奈を放っておいて、そんな胡散臭い物を取りに帰っていたのか、この人は。

そう思うと、少し腹立だしかった。

何重にも巻かれた布を所長が全て取り除くと、黒く煤けた古めかしい立方体の木箱が現れる。

大きさは10cm角程度。

いや、それより少し大きめかな?

その箱は更に幾重にもネックレスの様な細い銀の鎖でぐるぐる巻きにされていた。

「何か、随分と厳重なんですね」

俺がそう言うと所長は、『まぁね。一応本物だからね』と答えた。

「え?」

「黒魔術に使ったのかは不明だけど、これの中身は本物のオカルトグッズだから」

え?どういう事?

その中に何か危ない物とかが入ってるのか!?

そう思った瞬間、俺の身体は思わずそこから飛び退いた。

「ふふっ。キミはビビリだねぇ?」

そう言ってニヤニヤ笑いながら、所長は俺を見る。

ハナさんは『そんな事はどうでもいいから早く開けろ』と所長を急かした。

「まぁまぁ…」

そう言いながら、所長は鎖を解くと小箱をパカッと開けた。

俺は少し離れた所からその中を覗く。

指の木乃伊とかが入ってんじゃないのか?

そんな物を開けて呪われないのか?

ドキドキしながら、少しずつ近付く。

すると突然、所長がその箱を俺の方へ向けた!!

「うぉっ!?」

ヤバいモンだったら嫌だと、俺の目は反射的に閉じられる。

そんな様子を所長とハナさんは馬鹿にしたように笑った。

「大丈夫だよ。中身は水晶だから」

何だ。

水晶なのか。

俺はホッとして目を開けると、所長の傍に近付いて、箱の中身を見た。

赤茶けたビロードが箱の中に敷き詰められ、真ん中に目玉くらいの大きさの丸い水晶が鎮座している。

何でも、この石には偉い強い念が込められているらしく、持つ人に不幸を齎す曰く付きのものらしい。

…って、そんな物騒な物を持っていて、所長は大丈夫なのか!?

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