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第15章 告白

「恋奈っ!?」

俺は慌てて恋奈を抱き締める腕を緩め、彼女の様子を確認する。

良かった。息はしているみたいだ。

ホッと胸を撫で下ろすと、再びあの声が聞こえて来た。


──娘ヲ……助ケタイ……ダロ……?

娘ヲ……ココマデ追イ込ンダ奴ガ……

……憎イ……ダロウ…………?

ナラバ……オマエノ魂ヲ……

……我ニ……喰ラワセロ……

オマエノ……魂ト引キ換エニ……

娘ノ願イヲ……叶エテヤロウゾ──


暗闇の中からなのか。それとも俺の頭の中に直接響いているのか。不気味な低い声が聞こえた。

それは、俺が身代わりになれと言う事なのだろうか?

俺が自分の命を差し出せば、恋奈の想いを叶え、彼女を助けてくれるのだろうか?


──ソウダ……オマエハ……

コノ……娘ヲ幸セニ……

……シタイ……ノ……ダロウ……?

ナラバ……魂ヲ……差シ出セ……!!

サスレバ……コノ……娘ノ……願イハ叶イ……

娘ハ……幸セニ……ナレルダロウ──


「声」は俺に話し掛けてくる。

一瞬、「それが恋奈の幸せになるのであれば、いいのかな」なんて気持ちになってしまう。

いや、待て待て待て待て!!

俺が魂を差し出して死んだら、恋奈ともう「あ~んな事」とか「こ~んな事」とか出来ないって事だろ!?

冗談じゃない!!

俺は恋奈を救って(主に所長がだけど)、恋奈の望みを果たして(主に所長がだけど)、恋奈が高校を卒業したら、結婚して幸せな家庭を作るんだ。

いっぱいエッチして。いっぱい子供を作って。家族を亡くしてしまった恋奈に、家族を作ってやるんだ!!

だから、騙されないぞ!!

俺は所長を信じてる。所長が何とかしてくれる。

所長が体験させてくれた、あの感覚。あのアプリの所為で、死んでしまった三人の女性達に握られた手の感触を思い出す。

あんな事が出来る所長は、本物の能力を持っている人だと信じられる。

だから、所長が来てくれるまで、踏ん張らなきゃ駄目だ。

俺は暗闇に向かって、どこにいるか分からない相手を睨み付けた。

「ようし! よく頑張ったな!」

"ばぁん!"と言う音がして、玄関のドアが勢い良く開く。

そこには、所長と、ハナさんの凸凹な姿が月明かりを背景に浮かび上がっていた。

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