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第15章 告白

味覚は普通に感じるのか、恋奈は顔を顰める。

口から吐き出そうとするのを無理矢理飲み込ませる。

「ゴクン」と喉が鳴り、唾液と共に塩を飲み込んだのを確認し、俺は恋奈を抱き締めた。

暴れ出す前に押さえておいた方が、暴れ出してから押さえるよりも楽だからだ。

「清めの塩を飲ませろ」って事は、恋奈の身体の中に何か悪い物が居るって事なのか?

まさか、恋奈自身が既に怨霊化してるとか言わないよな?

手遅れだなんて事、ないよな?

俺は恋奈の身体をきつく抱き締めながら、彼女の肩に額を擦り付け祈る。

(神様! もし本当に俺に憑いてるなら、助けて下さい! 俺の大事な人を……。恋奈を守って下さいっ!!)

俺がそう祈っている間に、恋奈は信じられない程の低い声で唸り始めた。

よく、ホラー映画で悪霊や悪魔に取り付かれた女性が上げる、低い唸り声。そんな感じ。

勘弁して欲しい。俺、そう言うの苦手なのに。

だけど、逃げ出す訳にはいかない。

腕の中の恋奈が喉を掻き毟る様に手を動かす。

呻りながら首をガクガクと揺らし、手足を滅茶苦茶に動かして暴れ始めた。

彼女の身体を押さえる様に回した腕に、彼女の涎が落ちる。

これは恋奈じゃない。

そう否定出来たらどんなに良いだろう?

けれど、腕の中に居るのは間違いなく恋奈で。

まるで狂人の様に暴れる彼女が、俺の腕を引っ掻く。

痛みに思わず手を緩めそうになるけれど、俺はそれを堪えた。

血の滲む腕に追い打ちを掛ける様に、恋奈がそこに噛みつく。

物凄い力だ。このまま噛み千切られてしまいそうだ。

(恋奈……頼むよ。正気に戻ってくれよ……)

痛みを堪えながら祈る事しか出来ない。俺は無力だ。

好きな女の子の為に、何も出来ない。

自分の不甲斐なさに怒りが込み上げてくる。

悔しくて。悔しくて。悔しくて……。

恋奈をこんな風にしてしまった、事件を。彼女のお姉さんの命を奪った奴等が憎くて仕方が無い。

──ソレデハ、オマエノ魂ヲ喰ラワセロ──

ふと、耳を掠める声。男とも女とも取れぬ、いやどちらとも思える様な声が聞こえ、顔を上げる。

部屋の中の照明がいつの間にか消えていて、真っ暗で。

腕の中の恋奈は暴れるのを止めて、ぐったりとしていた。

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