テキストサイズ

君と僕の見ている風景

第18章 愛情と愛憎

「お疲れ様です」


スタッフ「お疲れ様でーす」


撮影を終え、俺は急いで楽屋に向かった。


早く帰りたい…。
早く潤に逢いたい…抱き締めて欲しい。


横山「翔くん!」


呼ばれてハッと振り返る。


いつもと変わらないヨコが俺を追い掛けて来た。


「お疲れヨコ」


横山「お疲れ。今日はごめんな。アドリブやり過ぎてびっくりしたやろ」


「う、うん…大丈夫」


ヨコの顔が見れない…。


横山「でも良かったわ監督褒めてくれて。俺も凄いやり甲斐あったし。達成感みたいな?」


「………」


横山「翔くん?」


ヨコが俺の顔を覗き込んで来る。


「ごめんちょっと疲れてて…お疲れ様」


俺はヨコの隣をすり抜け楽屋に戻ろうとした。


横山「翔くん待って。どないしたん」


ヨコに腕を掴まれる。


「いや…大丈夫だから…」


横山「………もしかして…怒ってるん?あのキスシーン」


「そんな…怒ってない…」


横山「そりゃ怒れんわな。怒る筋合い無いよな。皆に分かる様にドア開けっ放しであんなヘビーなキスしてたのに」


「ヨコ…」


横山「何?本当の事やん」


「あれは…本当にごめん。でも…謝ったよね」


横山「謝ったからって許すとは限らんやろ。あんなプロ意識に欠ける事。それにこんな避け方して。何やねんな」


ヨコの顔付きが変わる。
それと同時に俺を掴んでた腕に力が入る。


「いっ、た…ヨコ…痛い…」


横山「………ムカつく…ムカつくねんお前ら…」


「止め…」


ギリギリとヨコの指が腕に食い込む。


「痛い…!ヨコ止めてっ!」


声を荒げると我に返ったヨコが慌てて腕を離す。
その反動で俺はその場に尻餅を着いた。


横山「っっ…!」


痛む腕を庇いながら俺はヨコを見上げる。


「ヨコ…どうしちゃったの…」


横山「ごめん…」


そう呟くとヨコは走り去って行った。


スタッフは倒れ込んだ俺に気付くまで、俺はその場を動けなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ