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君と僕の見ている風景

第18章 愛情と愛憎

ー潤sideー


「お帰り翔…翔?」


帰って来るなり翔は俺の横を素通りし、洗面所へと向かった。


「翔どうした?」


後を追い掛けると…翔は蛇口を全開に捻り、口をゆすいでいた。


「翔」


水浸しになった翔の顔がゆっくりとこっちを向く。


翔はタオルを掴み、顔をゴシゴシと拭った。


翔「っっ、く…」


翔の瞳から涙が溢れる。
それでも翔は…何故かずっとタオルで唇を擦っていた。


「翔肌が荒れるから…!」


俺はそう言ってタオルを取り上げる。


翔「潤…」


ぽってりした唇が…少し赤くなってる。


「どうした…何かあった?」


親指でそっと唇を撫でながら俺は翔を見つめた。


翔「ヨコ…ヨコに…キス…された…ごめ…」


「え?」


翔「急に…キスシーン入って…それは仕方無いけど…でも…リハと違う…押し倒されて…舌…入れられて…」


「………」


翔「俺…ヨコが怖くてその後避けちゃって…でもヨコに…腕…掴まれて…『人に見られる様な所でキスする様な奴に言われたくない』って…確かに間違って無いけど…あのヨコ…いつものヨコじゃない…俺…ヨコが怖い…」


「そんな事が…」


震える翔の身体を俺は抱き締めた。


「撮影…いつまで?」


翔「後1週間…」


「大丈夫。ヨコも反省してるだろうし…機嫌が悪かったんだよきっと。だから…大丈夫」


翔「………うん…」


翔が強く俺にしがみついてくる。


「俺明後日でクランクアップだからさ。出来るだけスタジオ行くよ。ツアーの打ち合わせもあるから毎日は無理だけど…」


翔「うん…」


きっと…翔も思ってるだろう。
あの着歴とメールの犯人…ヨコなんじゃないかって。
でも…ヨコを信じたい。
ヨコは同期で…同世代で…俺達の仲間なんだ。
そこまでする奴じゃない。


翔「潤…」


「ん?」


翔「………抱いて…?」


「………疲れてない?」


翔「………安心したい。潤の腕の中で…だからお願い…」


「分かった。負担にならない様に優しくするよ」


俺は翔を抱えて寝室へと向かった。


その夜は…優しく翔を抱いた。
眠る時も…翔を離さずに…翔が安心出来るように…俺の腕の中から離さなかった。


でもこの時既に…悲劇へのカウントダウンは始まっていたんだ…。

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