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Starlight Kiss

第9章 tragic love②

ー翔sideー


「………」


坂本「………」


手術室前のベンチで俺と坂本店長は舞の手術が終わるのを待っていた。


昌宏さんは忙しいのか、電話を掛けても出なかった。


「あの…本当にもう独りで平気です」


坂本「松岡が来るまで居るから。大丈夫」


震える俺の手を坂本店長は握ってくれた。





それから1時間程経つと、手術室のランプが消え、舞の主治医が出て来た。


「先生…!」


医者「櫻井さん」


「舞は…舞は無事なんですか?」


医者「応急処置で何とか落ち着きました。とりあえずは大丈夫でしょう」


「………とりあえず…」


医者「心臓の肥大がかなり酷いので…近い内にバチスタ手術をしないと…このままじゃ一月も持たないでしょう」


「そんな…!」


医者「それが成功すれば…延命出来ます。なので…早急に手術をしたいと思います。それしかありません。良いですね」


「………はい…」


医者「手術の事は後日またお話しましょう。舞ちゃんの麻酔は暫く切れないので…落ち着いたらもうお帰り頂いて大丈夫です。では…失礼します」


「ありがとうございます…」


俺は頭を下げ、先生を見送った。


先生が角を曲がり、見えなくなった瞬間、俺は力が抜け、慌てた坂本店長に支えられた。


坂本「櫻井。大丈夫か」


「………はい…」


坂本「………バチスタ手術って…聞いた事あるけど…難しい手術なんだよな…」


「………心臓の…腫れた部分を切るんです…。境目の判断が難しいらしくて…腕の良い外科医の方でも…生存率は50%…舞はまだ子供だからもっと…30%だって…」


坂本「櫻井…」


涙を流す俺を坂本店長は強く抱き締めてくる。


坂本「信じるしかない。きっと大丈夫。手術は成功する。こう考えろ。3割の人は助かるんだ。その中に妹さんは必ず入る。俺も信じるから」


「っっ…はい…」


坂本「今は思いきり泣け。でも明日からは…泣いた分強くなれ。兄貴だろ?」


「ふっ…う…はい…ぐすっ…」


俺は坂本店長にしがみつき、顔を埋めて泣いた。
坂本店長も…俺を受け止め、強く抱き締めてくれた。


明日からは…笑顔で舞を支えよう。
きっとやれる。


松岡「翔」


聞き慣れた声に声を上げると…


「昌宏さん…」


昌宏さんがそこに立っていた。

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