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Starlight Kiss

第9章 tragic love②

ー松岡sideー


井ノ原「松岡今日は荒れてんな…」


「うるせ」


笑いながら俺を見つめる目の前に座る同僚・井ノ原。


部署での送迎会。
俺は席の隅で目立たない様に、ひたすら飲んでいた。


井ノ原「何だよ。彼女と喧嘩でもしたか」


「………さぁな」


井ノ原「図星か」


「………」


井ノ原「倦怠期か。なら憂さ晴らしでもしたら?」


「はぁ?」


井ノ原「はぁ?じゃねーよ。会社での人気ナンバーワンのくせに。ここは居酒屋。酒の入った女が沢山。より取りみどりだろ」


「アホか」


俺は井ノ原の小突くマネをしながら立ち上がった。


井ノ原「どうした」


「トイレだよ」


俺はふらつきながらトイレへと向かった。





「はぁ…」


用を足した後、洗面台で顔を洗う。
顔を拭きながら鏡を見つめた。


「翔…」


………翔に逢いたい。
そんな気持ちとは裏腹に翔からの連絡を俺はひたすら絶っていた。
付き添うと約束した妹さんの手術もすっぽかし…電話もメールも無視していた。


もう…翔とどうしていいか分からなくなっていた。


一旦戻りかけた俺達の溝が…お袋の言葉でまた深くなった。


翔の事は愛してる。倦怠期だなんて思いたくない。
でも…妹さんの事…ホストの仕事…お袋に反対されて…何か…もう疲れた。


「はぁ…」


そしてそのままトイレを出ると、入口で小柄な見覚えのある子が立っていた。


確か…。


女性「お、お疲れ様です」


「お疲れ。坂口さんごめん待ってた?気付かず長居しちゃったな」


坂口「いえ…松岡さん大丈夫かと思って」


「え?」


坂口「かなり飲まれてたから…」


「あぁ。大丈夫…」


坂口「なら良かったです」


頬を赤く染め、はにかんだ笑顔を向ける彼女。
直感で分かった。


………こいつ…俺に気があるな。


『憂さ晴らしでもしたら?』


井ノ原の言った言葉が…何度も頭でリピートしていた。

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