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彩夏 ~君がいたから、あの夏は輝いていた~

第1章 友達でいたいのに

「でさ、最後に加藤先輩がみんなにひとことずつ言ってくれて」
「キャプテンだよね、加藤先輩って」
「そ。『甲斐は本当はリーダーにむいてるから、1年をまとめろ』って言ってくれた。それ聞いて、泣いたもんな、おれ」
「へー。でも甲斐のまわりはいっつも人が集まってるよね」
「だって楽しく野球したいじゃん」

地方大会の決勝で負けた市高は、3年生が引退した。甲斐は正式にセンターを守ることになった。1年生からベンチ入りしたのは、甲斐と渡辺くんの二人だけらしい。
かき氷デートから3日。
補習が終わって学校に行く用がなくなった私は、甲斐にあいたいと言ったもののどうしたら会えるのかわからず、ずっと考えていた。
美帆と永田先輩は、もう付き合っているのだから理由がなくても一緒にいられる。毎日その様子がメールで送られてくるのだ。おかげで私の受信リストは『美帆』がならんでいる。
そこに『甲斐』の文字が入ってきたのはついさっきだった。

『いま出られる?中学校の横の公園!』

夕方と言っても、まだ日は高くて、蝉はこれでもかってほど鳴いている。そんなことは何だって言うのだ。私はすぐに返信をして自転車に乗った。
そしていま、私たちは並んでブランコに座っている。
甲斐はビーサンを履いていた。初めて見た、甲斐の素足。親指より人差し指が長い。毎日の練習で日焼けしているのに、足だけは白いままだ。

『行く!』

返信メールには、それだけしか書けなかった。それより早く甲斐にあいたかった。
そうか。
メールすれば良かったんだ。

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