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いつまでもここに居て

第7章 緋色のdance[52]




真夜中。
1人で歩く夜の道。

「やあ、潤。待ってたよ。今日は何して遊ぶ?」
上を見上げると緋色の月に輝く男、翔の姿。
緋色の月を目に埋め込んだかのように彼の目は充血とは格が違う真っ赤なガラス玉のようだ。

1ヶ月前。

「遊んでくれませんか?」

夜中の路地で突然振り返ると男が遊んでくれませんか?と言った。
綺麗な容姿だったからつい頷いてしまった。

その瞬間ナイフを突きつけられた。
元々瞬発力はあったからサッと避けた。
けど、逃げられず頬にはスーと過擦り傷。

「てめ…っ、」
「避けられたのは君だけだったよ。嬉しいな、」

スーツのままその男に足蹴り。サッと避けた好きを狙って更に足をかける。
しかし、ふわりと身軽な彼は軽く空中に浮いた。
足は掛けられずじまいだが、そのまま距離を置きガードの体制を作る。

「なんだよ、お前…」
「俺?翔だよ。初めて俺と遊んでくれたね。嬉しいな。もっともっと遊んでよ。」
嬉しそうに弧を描いた翔と呼ばれる男は軽々とジャンプして、二階建てのアパートに飛び写った。

「緋色の月は俺の目の色。毎日毎日俺と遊んでよ。」
スッと立った翔は後ろの月に照らされてとても不気味だった。

それから毎日のように彼と遊んだ。
毎日同じことの繰り返しの中で命を懸けて遊ぶなんてスリルがあってどんどん溺れていった。
やりたくない仕事の中で唯一自分のありのままを出せる。そんな快感がたまらなく良かった。

キンと響く金属音。俺の右のサイドキックはかわされ、隙を見せてしまった左側の首にナイフが宛がわれる。
「俺の勝ち」
ニヤリと笑うとスーとナイフを引く。
チリっとした痛みとじんわり温かくなって滲み出る血液。

「殺さないの?」
「うん。殺さない。だって名前を聞いてないから。」
「そう。じゃ、俺の名前は…潤だ。翔。次君がこうなった時は君を失うのを心苦しくなるようになるよ、」
「殺さない。って方法は無いんだね?流石だよ潤。俺が動けなくなるまで…遊んで。」

緋色の月は輝く。
俺達の【遊び】を憂うかのように。
長い夢は夜に消える。
夢は何時しか現実となり、モノローグへと。

この盤の上で君と踊り続けよう。
聞こえるのは金属音と息の音。
潜めて、潜めて。
サッと振りかざしたナイフの結末は突然降り出した霧のような闇の中に消えた。

END

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