
いつまでもここに居て
第9章 僕と君の幸福論[21]
家を出なくなって二週間。そろそろ外の景色が見たい。
そう思ってきた。
「櫻井さん、ちょっと僕出かけてきますね。」
「え?何故です?何か買い物でしたら俺がするのに。」
「あ、ちょっと…外の空気が吸いたくて。」
「…外の空気?窓を開ければ吸えるはずだよね」
何故だか櫻井さんは外に出たいという言葉に過激に反応した。
まるで[出るな]。そう言うかのように。
「あ?もしかして色んな景色が見たいの?」
「…」
「マチュピチュとか?外に出るくらいならもっと凄いところに…」
「僕…行ってくるから。」
「待ってよ。なんで?」
「い、痛いよ…!!」
ギリギリと掴まれる手。爪が食い込み、軽く血がにじむ。
「いっ!行かないから!!離して!」
思い切り手をほどいた。
「あ。大野さん見たい景色を描いてよ。そうしたら絵の中へ連れてっあげるよ?誰にも邪魔されず色んな景色を独り占めに…」
「僕はそんなこと望んでない。」
「外の世界に出ることが大野さんの望むことなの?それが幸せなの?」
