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いつまでもここに居て

第9章 僕と君の幸福論[21]



□相葉part□

相葉商店は小さな店。けど、ここは画家の集まるところ。絵の具などの画材だけはピカイチに揃っている。

二日に1回来てくれる大野さんに少し興味を持っている。
他の画家とは雰囲気がちょっと違っていて、うっとりしてしまう。
もう3年程経った今もこうして大野さんは絵具を買いに来てくれる。たまにアシスタントが買いに来ることがあるが、毎回絵の具などの画材だけ。

とある日、この町の者じゃない美青年がお店に現れた。

「コーンの缶詰めをください」
と。

凄く綺麗な顔つきをしていて、つい声をかけた。
「君はここの者かい?」
「…いえ。ですが、今は大野さんのアシスタントをしております。」
「…大野さんが頼まれたんですか?コーンの缶詰めなんて。」
「いいえ?今俺がクリームシチューを作ってるんです。」
「…そろそろ大野さんは絵の具に困って買いに来ると思ってました。」
「あ、それなら心配いりませんよ。もう画材目的でこちらを伺うことはないと思います。」
「な…なんで…!!このお店以外で大野さんが使うような画材は隣町まで行かなきゃないはずだ…!!」
つい声を張り上げた。

他人と軽く視線がぶつかって痛かった。
「あれ…?もしかして、貴方…大野さんのこと好きなんですか?」
「ち、違う。」
「でも残念ですね。大野さんは絵だけに専念するんです。貴方に会えない程に。俺はそのお手伝いをするだけなんです。」
ニコリと微笑む笑顔には何か秘密が隠されていたことは断言できる。

「では。」
そう言って立ち去る青少年を見つめた。
必ず秘密を探してみる。
そう誓って。

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