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いつまでもここに居て

第13章 相合傘 濡れてる方が 惚れている[54]



「「いただきます」」
声を合わせて手をかけていく。
カリッ。
ジュワっと口の中で広がる肉汁、そしてカリカリの衣。肉の身がしっかりしていて咀嚼する度に旨みを感じる。
一緒に付いてきた柚子胡椒が肉や嫌な油の匂いを仄かにかき消し、口の中も優しい柚子の香りに包まれる。
「美味しい…」
「すごい音したね?俺もちょーだい、」
「あっ、!」
ひょいと取られた唐揚げは潤の口の中に。
「うわあ…肉汁がすごい…」
「でしょ?これ美味しい…て、てゆーか、唐揚げ食ったんなら俺も頂戴よ」
「あ、そーだった…これも美味しいよ~?はい、あーん」

差し出された潤の箸に挟まれた鯖の味噌煮。
こ、これ。あーんってやっていいのかな。
これ間接キスだよね?うわ、なんでこんな初々しいの俺。普通に食えばいい話。そーだ。

自分を納得させて、大きく口を開いて鯖を食べる。ふわふわとした鯖独特の柔らかさ、胃がもたれない魚の脂。
「おいし」
「でしょ?毎日こういうのがベストだよね…けど、俺1人で作るとなると仕事上忙しくて…」
「ううん。大丈夫。…むしろさ、俺が手伝ってもそれ…出来ない?」
きょとんとして、俺の話を理解する潤。

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