ねがい*ごと
第6章 優しい貴方
玄関の前で、俺は胸ポケットから合い鍵を取り出した。
別れた日、亜沙美に鍵は返したが、実はもう1つ持っていたんだ。
俺は鍵を開けて中へ入った。
玄関からリビングへ続く、廊下のつきあたった明るい部屋に、亜沙美はいるのだろう。
1人なのか、そうじゃないのかわからない。
とにかく確かめるのだ。この目で。
俺はひどく緊張していたが、足音をしのばせながら向かった。
そしてレバーに手を差し掛けた時。
聞こえる…
亜沙美の声が。
穏やかな声で話していた。
やはり誰かがいるのか?
「っ!」
俺はゆっくり…扉を開けた。