SEXはしたいけど恋愛はしたくありません
第1章 ダメ女とダメ男
「あっはっはっはっはっ!!!!」
大きな笑い声が響き渡る。
「ちょっ…ちょっと!ヒロト、声大きすぎ!」
私は慌ててヒロトの口を塞ぐ。
「…ゴメンゴメン、でもお前、それは冷めすぎだろ。」
ヒロトはまだ声に笑いを含ませて、目尻の涙をぬぐいながら言う。
「…だってあまりにもヘタくそなんだもん。」
「寧々、ヘタくそとか男に1番言っちゃダメな言葉。」
「あはは!」
場所は居酒屋。
私はヒロトと2人で飲みながら、先日の散々なSEXについて話していた。
「それで?そいつとはどうなったの?」
「え〜もう切ったよ。ブロックした。SEXが下手なセフレとか意味ない。」
「ほんっとお前最低だな!」
『最低』
たしかに私にぴったりの言葉だ。
ちゃんと付き合うわけでもなく、フラフラといろんな男と寝てる。
したくなったら会って、嫌になったら切る。
それだけ。
「新しい男見つけるの?」
「ん〜別に。他にもセフレいるし。」
「俺もいるしね。」
ヒロトは顔を近づけてニヤッと笑う。
なんかムカつく。
悔しいけど、ヒロトはカッコいい。
「別にヒロトはカウントしてないけど。」
「ひっど!セフレ以下かよ。」
ひどいのはどっち?
ヒロトだって散々遊んでるくせに。
ヒロトの私よりタチの悪いところは、遊んでるくせに、彼女もいるところ。
「まだ帰らなくていいの?」
もうすぐ日付が変わろうとしていた。
「あ〜今日アイツ自分んち帰ってる。」
「ふぅん。」
「来る?」
ヒロトがこっちを見る。
ほんとコイツはズルい。
私の答えなんか分かってるくせに。
「どうしよっかな…」
それでも迷うフリをするのは、私のちっぽけなプライド。
ヒロトに見透かされているとしても。