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DAYS

第9章  World of … A×N




「え、ちょ、雅紀!?」
「まーって呼んでよ…。」


こんな時でも
そこのこだわりは変わんないのね。


「…まー?」
「嬉しくって…。

俺ばっかり好きなのかなって、
そんなにグイグイいったら嫌われるかなって
ずっと不安だったから…。」
「まー…。」


雅紀は優しい。
その優しさに、ずっと漬け込んでた。


ちょっと甘えすぎちゃった。


俺が素直になれなくても、
イラついててぶっきら棒になっても、
ヤキモチを妬いても、

ずっと温かい目で見てきてくれた。
それが普通だと思ってた。


普通なんかじゃないんだ。
雅紀はそれを言わないだけで、
ずっと不安だったんだよ。


「和。」

雅紀の少し震えた声。

顔を両手で覆って、俺に聞いてくる。


「俺のこと、好き?」って。


そんなの当たり前でしょ。
なんて、簡単に言えなかった。

そんなこと聞くな、ばか。
なんて、いつもの反応も出来なかった。


その言葉には、今の雅紀の気持ちが
全部含まれてる。
愛も、寂しさも、不安も全てが。


俺も、精一杯の気持ち、伝えるよ。



「好きじゃないよ。」
「え!?」
「愛してる。」
「かずぅー…。っ。」


ずっとずっと。
子供の頃から好きだった人。
いつしかそれは、『好き』っていう想いじゃ
足りなくなってきた。

同じ時間を過ごすほど、雅紀を知るほどに
どんどん好きが積み重なっていって。
大きくて、温かい愛になったんだよ。


「いっつも、言葉足りなくてごめん。
ヤキモチばっかり妬いてごめんね。」


今日だけ。今日だけは素直になろうかな。


雅紀を、俺が
世界で一番の幸せ者にしてやるよ。





楽屋からの帰り。

横を並んで歩く幸せ。
同じ家に帰る幸せ。


ちょっと離れる時間も寂しくて、
なるべく体をくっつけて歩く。


少し歩きにくい幸せ。
右隣が温かい幸せ。


俺の世界は、輝いている。

目に映るもの全てが、鮮やかな色を持ってる。
俺に幸せを感じさせてくれてる。


それもこれも、全部右のこいつのお陰で。



「まー。」
「んー?」
「今日、オムライスがいい。」
「またー?」


-end-

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