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DAYS

第14章 sound O×S




朝。


トントンって、温かくて
どこか懐かしい音が部屋に響く。



昨日は結局味噌汁を作って
あげられなかったから…。

リベンジもかねて、
朝から頑張る俺。


昨日の激しい情事が甘い余韻に
なって、俺の腰を重くさせてる。


だけど、どうしても作りたいから。



「智くんのために、作るぞ。」


落ちてきてる袖を、ぐっと上げて
気合を入れ直した。










「…何でこうなるのぉ…。」


味噌汁(風)の入った鍋の前で、
1人項垂れてる俺。


何だ、これ。


「どうやったらこうなるんだよ…。」


味噌汁を作ったはずなのに、
茶色じゃない。


もはやこの世のものではない
色をしている物体を前に、
俺は絶望してる。



「こんなの食べさせらんないよ…。
どうしよ。」


かと言って、作り直せるほどの
時間は残ってなくて。


「しょうがない。」


鍋を傾けて、シンクに流そうとした時



「何してるの?」


俺の後ろから、愛おしい人の声。



「あ、あっ、智くん、おはよう。」
「おはよう。」
「いい天気だね、寝癖ついてるー」
「なーにしてるの?」


さり気ない話題転換作戦が失敗。


「あっ、いや。」
「それ。翔が作ったの?」


俺の持ってる鍋を指差しながら、
嬉しそうな声色で言ってる。

顔を見れば、やっぱり笑ってた。


素直にこくんと頷くと、


「何で捨てちゃうの?」
「だって、上手く出来なくって…。

こんな味噌汁、智くんに出せないよ。」
「翔が作ってくれたものなら
何でも食べる。


だって、俺のために作って
くれたんでしょ?」


そう言う智くんの顔は、
最高級の笑顔で。


すっごく、すっごく嬉しそうな顔で。


「だから食べるよ。ありがとう。」


こんな不器用な俺を否定しないで、
ありったけの優しさで包んでくれる。

俺には出来ないことを
簡単にやってのける。


大野智は本当に凄い人だな、って
毎日感じるよ。


だって、誰よりも近くにいるんだもん。



もちろん。
今までも、これからもね。



俺たちの時間はまだまだ続く。




-end-

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