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DAYS

第31章 Make your ... O×N






局のエレベーターの前。


誰もいないそこは、
俺たちだけが止まっているようで。


誰かが近づく足音も、
何も聞こえなくなって、

目の前の悲しい顔をした翔さんしか
目に入らなくなってた。



長い長い静寂のあと。


「え…。」


あんなに時間がかかって、
出せた言葉はこの一文字だけ。


俺のその声で、
はっとした表情になった翔さん。


「あ…。」
「あの、翔さんー…」

「…ごめん。

ほんとにごめん…。」


すっと俺の横を通り抜けて、
駐車場へと向かっていった。


翔さんの残り香だけが漂う中で、

俺はしばらく動くことが出来なかった。



翔さんは、今までどんな気持ちで
俺を見てたんだろう。

どんな気持ちで、大野さんを好きな
俺の話を聞いてたんだろう。


翔さんがどれだけ無理してたのか。

そんなの、痛いほど分かった。




「…どうしたらいいんだよ…。」


家に帰ったって、
すぐには呑み込めなくて。


風呂に入っても。
ビールを飲んでも。

何も変わらない。

ずっと翔さんの言葉が響いてるだけ。


『好きなんだよ!お前が!!』


翔さんがずっと、
苦しそうな顔をしてた意味が
やっと分かった。

分かったのに、
モヤモヤは消えることがなくて。


「翔さん、ごめん…。」


ぽろっと出た謝罪の言葉。

自分でも、何に対して
謝っているのか分らないけど、

でも…俺は。

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