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視線

第16章 肉欲に溺れて…

「…えっ?…どうして…? 奥さんとしてないの…?」

舞は 怪訝そうな顔で 梶原を見た。心底は 信用してはいない。

「…ん…まぁ…色々あって…」

梶原は 窓から見える 蒼い海を見ながら 複雑な表情で呟く。

「…なんか。隣同士って いつでも 逢えるし 毎日でも顔が見えるから すごく嬉しいけど… 逆を言ったら 舞達夫婦が仲良くしてるのも 見るんだよな…。セックス中の声だって 聞こえるし…
舞が どんな相手に 喘ぐかも わかってるし…。
見たくなくても 聞きたくなくても わかってしまうんだよな…」

そう話す 梶原の顔は悲しそうだった。

「…うん…」

舞は 何も言えなかった。 確かにそうだから…。

でも どうしようも出来ないのだ。

すると 梶原が…

「 ちょっと 向こうのお土産屋で ジュース買って来るよ!舞…ちょっと 待ってて!」

そう言い 舞にキスをすると 梶原は車を降り ジュースを買いに行った。

舞も 車から降り 小高い丘の方に歩いて行き 広く蒼い 穏やかな海を眺めていた。

「…あれーーー? 舞ちゃん?…舞ちゃんじゃない?」

後方から男性の声がして 振り返り その顔を確認すると 舞はギョッとした。

夫 涼太の同僚の 三島だった。

舞は 目の前が真っ暗になり 血の気が引いた。

…み…三島さんだ…雄介といるのを 見られたかしら…

舞は 青い顔をして 一歩下がった。

しかし 三島は気付いてないのか

「…あれ? 涼太は1か月出張 だったよね? 舞ちゃん 何してるの?」

三島は 屈託のない顔で 不思議そうに尋ねる。

「…あ…あの…と…女友達と…ド…ドライブに来たんだ…友達は 今…ちょっと…別の場所で 海見てると思う…」

舞は 咄嗟に嘘をついた。 バレてないだろうか… 大丈夫だろうか…
どうか 雄介が来ませんように…

舞は ハラハラして 頭が真っ白になった。

「…そっか! 今日 天気いいもんね! いいドライブ日和だよね!」

そう 爽やかな笑顔で 舞に向かって言ったが ふと視線を下げると 風になびき 体に張り付いている カーディガンに目がいった。

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