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甘く、苦く

第66章 櫻葉 【帰り道】






でも、櫻井さんにさっきまで
触れていた右肩を洗うのが
なんだか嫌で。

…変態みたいだよね。

だけどさ好きな人に触れたところは…
それも、滅多に会えないから、
洗いたくないんだ…。

嫌でも汚いし。
洗おう。


「ふぅ…」


いつもなら、風呂上がりなら必ず
髪の毛も乾かさずに
ボケーッとダラダラしてたんだ。

だけど。

櫻井さんの事を考えることになってから
ダラダラしてる子って嫌いかな…とか
俺の乙女思考が動いちゃって。

その日からダラダラするのはやめて、
キッチリ髪の毛を乾かすようにしたんだ。



全部全部…櫻井さんのために。

付き合える可能性なんてないのに、
櫻井さんのために…やめたんだよ。

そういうの、
気付いてるのかな…?

ほら、すれ違った時
いい匂いがするように、
ちょっとだけ高い香水つけてみたり、
柔軟剤にも気を使ってみたり……。


そういうところ、
櫻井さんは気付いてるのかな?


…気付いてないよね。


気付くはずないよね。

櫻井さんには俺よりも夢中になることが
いくらでもあるんだからさ。

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