甘く、苦く
第66章 櫻葉 【帰り道】
「え?雅紀?」
「あれ、相葉かよ…」
聞こえてくる言葉を無視して、
教室に入る。
途端に、人が寄ってきた。
「おい相葉、なんで髪の毛
黒いんだよ」
「や、なんか茶髪飽きたっていうか…」
「相葉くん茶色の方が似合ってたよー?」
「ありがと。
でも、黒いのがいいかな…って」
……俺は、櫻井さんのタイプになるよう、
…恋人なんかになれっこないけど
少しでもタイプに近付けるように。
「…雅紀、似合ってんじゃん?」
「…ありがと。和」
「なんかあったの?」
「っ…え?」
「やっぱり。」
ふうっと呆れたように息を吐く。
和は俺を見つめ、ぽつっと呟く。
「そんなに、夢中になる人がいるんだ?」
「っんで、それ…」
「…最近、変わったなって思った。
前よりも生き生きしてるし、
…カッコ、よくなった気がするし…?」
「ほんとっ!?
俺、カッコよくなった!?」
「っ……」
和に顔を近付けたら
和の顔が真っ赤になった。
「っめろよ!あほっ」
「ご、ごめっ…
和、顔赤いよ…?」
「うるせぇーっ!!
夕陽のせいだよ!バカ!」
「えぇっ、ごめんっ…!!」
…わかってるよ。和。
お前の気持ちにも、
お前が俺の気持ちに気付いてるのも。