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甘く、苦く

第68章 櫻葉【snow flake】






教授の話がいつもより長引いたから
今日は少し遅めの帰宅。

…翔さん帰ってるかなぁ、なんて
思いながら自転車を押す。

途中で和と松潤と別れて、
朝来た道を歩く。


…静かだ。

ふうっと息を吐けば
白くなって空へと消える。


それが楽しくて、ふーふーやってたら、
後ろからくすくすと笑い声が聞こえて。

恥ずかしくなって後ろをみたら
翔さんがいた。


珍しく、スーパーの袋を提げていた。


「雅紀、なーにやってんの。
子供みたい。」

「っ、もう…仕方ないじゃんかぁ」


ドキドキと高鳴る胸が
未だに抑えられず。

目の前にいる翔さんを見たら
愛おしさが込み上げてきて。

抱き潰したい衝動に駆られたけど、
頑張って抑えた。


隣を歩く翔さんは数センチ背丈が低い。

大学に入ってバスケットボールを
また始めて。

そこで少しだけ伸びたんだと思う。


「…今日さ、鍋作ろうかなって」

「え?ほんとっ?
俺、今日鍋食べたいなーって
思ってたんだ!」

「…手伝ってくれる?」

「うん、翔さんのためなら
俺頑張るなぁ」


ニコニコと微笑めば
紅く染まる頬。

それは夕陽のせいだけじゃない。

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