甘く、苦く
第16章 磁石【ウソつき】
次に目が覚めたときはもう熱が下がっていた。
「あ、櫻井さん、おはようございます。
熱、下がったみたいですね。
大野さんからあと一日休んでください、とのことです。」
看護師さんはにこにこしてた。
「ありがとうございます。って伝えておいてください。」
「はい、しっかり伝えておきますね。
では、ご用があったらナースコールを。」
看護師さんはそれだけ言って病室を出ていった。
昨日のは、夢なのか、現実なのか…
いまだにわからない。
ニノがいて、キスされて、愛してるって言われて……
ニノが、いた。
それだけ。
「翔ちゃん、きたよ。」
相葉くんがひょこっと顔を出す。
「相葉……くん。」
今、会いたくない人に会った。
ニノを奪った人。
「具合どお?」
「どーにも、」
相葉くんに話す必要がない。
「怒ってる、よね?」
「うん…」
当たり前だろ。
「あのね、俺、ニノのこと抱いてないよ。」
「はあっ?嘘ついてんじゃねーよ!」
俺のスマホからニノの喘ぎ声が聞こえてきたのに……
「あのね、ニノに…抱かれたの…」
「…抱かれ、た?」
いや、もうよくわかんない。
えっとー、あ、うん。
大体わかった。
「そ、っか…」
「そ、ですよ。」
よくわかんないな。
でも、相葉くんは抱かれて、ニノが、相葉くんを抱いたってことだよね。
「相葉くん、ニノに……会いたいよ…
話が、したい…」
「そーゆーと思って、連れてきたよっ!
ニノー、入んな~!」
病室のドアが開いて、ニノと相葉くんが入れかわった。
うそだろ…
手を伸ばせば届く距離。
どうしよう…