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甘く、苦く

第72章 櫻葉【チカヅキタイ】

相葉side



ワケがある。

帰りが遅いのにも、
一緒に帰れないのにも。

翔ちゃんを嫌いになったわけじゃない。
嫌いになんてなれるわけない。


むしろ、もっと好きになったんだから…

会えない分、
もっともっと大事な存在になったんだから。




──…がちゃ、


冷えきった寝室のドアノブを
ゆっくり回した。

…もちろん、翔ちゃんは寝てる。


息を潜めて、
そっとベッドに潜り込めば。

当たり前のように、
一人分空いているスペース。

俺が来た時に困らないようにって、
翔ちゃんの気遣いに
思わず吐息が漏れた。


いつもそうだ。

俺のために…。


「んんぅ…」


寝相がいいわけでもないのに
隅の方にいるから
落っこちそうになってる。

そんな姿が微笑ましくて、
愛おしくて。


…やっぱり俺は、翔ちゃんのことが
大好きなんだよ…。



…避けてるわけじゃない。

ただ…。

今年はしっかり祝いたくて。

去年はお互い忙しくて
メールで済ませてしまったから。

今年はしっかり翔ちゃんの顔を見て
しっかり祝いたいんだ。

だから…今だけ許してよ。
全部、全部…。

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