甘く、苦く
第72章 櫻葉【チカヅキタイ】
「ん…。」
鳥の囀りと朝日で目が覚めた
気持ちの良い朝。
寝室から出れば、
いつもより静かだ。
…翔ちゃん、どこに…?
どこにいったの?
…俺に、愛想尽くしちゃった…?
嫌な汗がじわじわと出てきて。
変な考えしか浮かばなくて。
…やだよ。そんなの。
翔ちゃん、翔ちゃんっ…
離れたくないんだ。
もっと一緒にいたい。笑いたい。
やだ、やだっ…やだよ…
冷たい涙が頬を伝う。
俺っ…こんなに翔ちゃんのこと、
好きだったんだ…
好きだったのにっ…。
「…なに、やってんの。」
「っわ……っ…」
首元に顔を埋められて
目を見開いた。
ほんのりと香る翔ちゃんの香水。
「んー?
なんでこんなに泣いてんの?
…あ、まさか〜怖い夢でも見た?」
「違っ…もうっ…翔ちゃぁあんっ…」
「わっ……ふふ、もう、」
翔ちゃんに抱きついて
わんわん泣いた。
涙が枯れるくらい。
「っ、ふ…うぅっ…」
「あーもう、ほら、おいで?」
「っ…」
翔ちゃんの胸に飛び込めたば
ちゅ、と短いキスを何度もされた。
…やたらと音が響く、なんて
思いつつ、翔ちゃんの唇に夢中で。
「んっ…しょ、」
酸欠状態になってとんとんと
胸板を叩いても
なかなか離してくれなくて。
「んーっ…!」
俺が抵抗すれば、
やっと離してくれた。