甘く、苦く
第72章 櫻葉【チカヅキタイ】
「翔ちゃんキス、いつも長すぎ…
息…できないってば〜。」
「…雅紀がキス下手なの。
鼻から息しろって
いつも言ってるじゃん。」
「むー…練習、します…」
「誰と?」
翔ちゃんがむっとして
俺に聞いてきた。
「…そりゃぁ、翔ちゃんでしょ。
それ以外にする人いないし…」
俺がそういえば
翔ちゃんは顔を真っ赤にさせた。
それから、ぐいっと引き寄せられて
「そういう可愛いこと人前言うの…
禁止だからね…?」
って。
…っふふ、
朝の時間がこんなに幸せだなんて
俺は知らなかった。
…ふふ。翔ちゃんといれるだけで
幸せなんだ。
「ね、雅紀…」
「ん?」
「今日は、あの…」
「オフだよ。
んふふ、一緒にいれるね。」
「…うん、」
「…今まで、ごめんね。
疚しいことしてたワケじゃなくて…
ほら、翔ちゃんに
喜んでもらいたくって…」
「うん、」
だって今月は…
翔ちゃんにとっても
大切な記念日があるから…
少しでも、祝いたかったから…。
「…目、瞑ってくれる…?」
「え、なんか怖い…笑」
「なんもしないから〜」
「ん、わかったよ」
緊張する…
あー、やばい。
恥ずかしい……
こういうの、ドラマとかなら
全然緊張しないのに。
綺麗な顔した翔ちゃんの顔を見てたら
恥ずかしくなって。
震える手を頑張って抑えて
翔ちゃんの首にシルバーのそれをかけた。
「冷たっ…」
「まっ、まだ!待ってて!
目開けてちゃダメっ!」
少しだけ。
ほんの少しだけ今日は大胆に。
いつもより素直になろうって
決めたんだから…