甘く、苦く
第72章 櫻葉【チカヅキタイ】
唇が触れ合う寸前、
翔ちゃんから甘い吐息が漏れて。
どくんっ、と心臓が脈を打った。
状況ができていない翔ちゃん。
だからなかなかキスできなくて、
まどろっこしくて。
「…あー、もう、」
「っえ!?…んんっ…」
頬を固定して、
柔らかい唇に
優しい自分のソレを重ねた。
唇を離せば、
瞳をとろん…とさせて
口をほんの少しだけ開けて。
…ふふ、翔ちゃんとキスしたのは
ちょっとした意味がある。
「ね、雅紀っ。熱い、」
頬を紅く染めた
翔ちゃんと視線が絡んだ。
…もらった媚薬を
翔ちゃんに口移ししたったわけ。
…即効性でほんとによかった。
そこからは翔ちゃんのスイッチが
入っちゃって昂った熱を抑えるのに
必死だった。
気持ちいいことしか考えてないときの
翔ちゃんの顔が好き。
俺のことを見下ろしてる
雄の顔した翔ちゃんも好き。
「…っ、ふぁ…」
下ではふたりが繋がっていることを示す
卑猥な音が響いている。
一向に収まらない音が
俺の興奮を掻き立てる。
「まさっ…も、ゆるしてっ…」
「だーめ。…そうじゃなきゃ、
翔ちゃんの体熱いまんまだよ?」
「んんっ…も、だめぇっ…」
…翔ちゃんの泣いた顔も、
好きな俺は相当やばいヤツだ。