甘く、苦く
第16章 磁石【ウソつき】
「はぁ…」
やっと退院した俺。
ニノたちと顔を合わせるのが気まずい。
「わっ、翔さん!退院したんですねっ!」
楽屋にはいるなり、きゃーきゃー言ってるニノ。
こんなところも、かわいい…ハズなのに…
なんでだろう…
ニノのこと、かわいいって思えない。
「翔さん?どーしましたぁ?」
「あ、いや、なんでもない。」
なんでだろう…
そんなの、わかんないよ。
でも、好きなんだ。
それだけは、わかる。
「よし、みんな、行こっか?」
リーダーが声をかけた。
俺は立ち上がろうとした。
そしたら…ニノが、
「みんな、先行っててください。」
って。
「ニノ……?」
「翔さん、わたしは……」
ニノが唇をきゅっと結ぶ。
その、色っぽい唇に吸い込まれるように俺はキスした。
「翔……さん…?」
「だめ、だった?」
ニノはブンブンと首を横に振る。
「嬉しいです…けど。」
「けど?なに?」
ニノが何かを言おうとしたとき…
「ニノー、翔ちゃーん、来てー!」
リーダーに呼ばれた。
「じゃ、行こっか。」
「あ、はい。」
ニノは残念そうに肩を落としていた。
まあ、仕事に専念しようかな…