甘く、苦く
第16章 磁石【ウソつき】
収録は、順調に進んでいった。
「嵐さん、お疲れさまです。」
「お疲れさまでした~!」
スタッフさんは忙しそうに走り回ってる。
「翔さんっ、今日、一緒に飲めませんか?」
ニノからの誘い。
やっぱり、かわいいんじゃなくて…
「しょーさーん!きーてるんですかぁ?」
「あ、ごめん。いいよ。飲もっか?」
なんだろう。
ニノは、かわいいんじゃなくて…
かっこいい…気がする。
今、気付いた。
相葉くんを抱いたんだもんね。
俺も…抱かれたい…なーんて思ったり。
「さっ、行きましょ?」
ニノが俺の手を掴んで引っ張る。
「そんなに急がなくても、お店は逃げないよ?」
「いーえ!早く行っておかないと、混んじゃうんです!」
あー、そういうことね。
俺らも一応アイドルって職業だから。
一応…ね?
「わたし、翔さんのこと好きです。」
車に乗り込むなり、そんなことを言い出したニノ。
「あ、知ってるよ。でも…」
「それは、あとで聞きます。
答えは急がす、ゆっくりでお願いしまーす。」
その笑顔もかわいいハズだったんだけど、
運転席に座って、俺に微笑むニノは獲物を狙う瞳で。
俺、ニノに狙われてんの…?
ニノは、小動物だったのに、いつの間にか、立場逆転…
「翔さーん、バックがうまくできません…」
泣きそうになりながら何度もするニノ。
「あ、じゃ、俺運転する?」
「あ…できたからいいです。」
普通にできてんじゃねーかよ!
って、突っ込みたかったけど、ニノの唇が触れた。
「ふふ、翔さん、無防備過ぎますよ。」
「なっ…」
ニノはさっさと店内に入っていった。
「ま…まてよ!」
俺はその後ろ姿を追い掛けて、店内に入った。