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甘く、苦く

第73章 磁石 【move on now】session 5






ジャージャーと音を立てては
吸い込まれてく水。

きゅっと音を鳴らして
閉めた。


…やっと終わった。


あー、ほんと。

なんで言えないのかなぁ。


「バッカだなぁ…」


一番のバカは俺かもしれない。

ぐっと唇を噛み締めて
俯いた。


一緒にお風呂入りたいとか、
翔さんは思わないのかな。

あー、もう。
なんだろ。なんでだろ。

なんでこんなに
翔さんのこと好きなんだろ。


ただの居候だったくせに
こんな関係になるなんて。


「…二宮……?」

「ひゃぁ…っ、」


いつもならシャンプーの匂いが
するのに……

…なんで、髪の毛濡れてないの…?



「…一緒に風呂入ろ?」

「っえ…」

「あれ?こうゆうことじゃないの?
違った?計算ミス?」


ニコニコしながら俺を見つめて
抱き寄せた。


「なん、で…気付いてた…?」

「うん、気付いてた。
なんであんなに風呂入らせようと
しないのかなーって。

あ、皿割ったのは計算外だった。」


ごめんね、って言いながら
俺をより強く抱き締めた。


「いっ──…」

「あ、ごめん。
強くしすぎちゃったね。」


ぱっと体を離し、
腕を擦ってくれた。


「あ、大丈夫…。
そんなに痛くなかったし…」

「…ふふ、そう?
風呂入ろっか。ね?」


うん、って言いながら
気付いたことがあった。

…最初から翔さん、
バスタオル二枚持ってた。

その時点で一緒に入ってもいいって
ことだもんね…?


「……翔さん、バスタオル
二枚持ってたのって…」

「あ、気付いた?
ふふ、そう。最初っから
一緒に入るつもり満々だったってこと。」


にっと微笑み、
俺の頭を撫でてくれた。

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