甘く、苦く
第73章 磁石 【move on now】session 5
そんな行動に、
いちいち胸が高鳴る。
もうずっと一緒にいるのに、
未だに慣れない。
…翔さんは慣れちゃったのかな。
…ん?
慣れちゃったってなんだ。
慣れちゃって。
…別に慣れたっていい。
でもいつか、俺にドキドキしなくなる日が
来るのかなぁ…。
そう思ったら、
急に寂しくなって。
少し前を歩く大きな背中に
ぎゅ、と抱き付いた。
「ぅおっ、……どうかした?」
「…なんでもないよ。」
すぐに離れ、
翔さんの行動を確認。
「具合悪い?」
「んなわけ。」
「じゃあなんで急に、」
「抱き締めたくなるような
背中してる翔さんがいけない。」
「え、俺のせい?」
「うん。」
「即答かよ笑」
また、ふっと微笑み、
俺の頬に手を添え、キスをした。
…っ、
だめだ。
完全にペースを乱されてる。
「は、ぁ…」
苦しくなったフリをして、
キスをやめた。
艶っぽい表情を浮かべる
翔さんの色っぽい唇に、
今度は自分からキスをすれば。
「っ…」
びっくりしたように、
焦るように、
でも、俺のことを
優しく抱き締めてくれた。
…ふふ、
もっとキスをしていたいけど、
やっぱり今日はおしまい。
さっきいろいろとシたもん。
これ以上シたら
明日に響くしね。
ぱっと翔さんから離れて、
残念そうな顔した翔さんに
気付かないフリをして
風呂場に向かった。