甘く、苦く
第73章 磁石 【move on now】session 5
広い背中に抱きつくのが好き。
翔さんの鎖骨が好き。
つまり、
翔さんの全てが好き。
「…ごめん」
「ん?」
「二宮明日も、早いのに…」
「…ふふ、だいじょぶ。
だって翔さんにたっくさん
愛貰ったんだもん…くふ、」
「…確信犯なのか?」
「くふふ、さぁ?」
口元に手を当てて、
くふふって笑う。
翔さんの広い手が好き。
…あぁ、このまま時が止まったら、
ずーっと一緒にいられるのに。
許されるなら、
ふたりだけの世界で
ずーっとずっと…。
翔さんといたい。
話したい。
「…二宮、」
「ん?」
「また今度、買い物行こ」
「うん?」
「…お前の服、
そろそろちゃんとしたの
買わなきゃだろ?」
「…あー、そうだね。」
「高校も、行ってないんだろ?」
「…いーよ。そんなの。
翔さんと結婚してるようなもんだし、
もう専業主婦みたいなもんじゃん。」
「…あっそ」
…ふふ、耳まで赤くなってる。
「そりゃ、バイトくらいしよっかなー
とは思ってるけどさぁ。」
「だめだ。」
「…へ?」
「バイトなんかしたら、
二宮の可愛さが他の人に知られる。
二宮の可愛さは、
俺だけが知ってりゃいーんだよ。」
「……///もう」
…あー、もう。
ほんと調子狂うな。
シャワーを浴び終わって、
寝室に行けば、
あっという間に睡魔はやってくる。
「…おやすみ、翔さん…」
「ん、おやすみ」
ぎゅっと瞼を閉じて、
ゆっくりと夢の世界へ堕ちていった。