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甘く、苦く

第74章 お山【miss your voice.】session 1






「まーさーきー、
明日の小テストの範囲、
どこだっけぇ〜?」

「んとねえ…数学Ⅱだったかな。
確か応用のとこ〜」

「…数学Ⅱ…あ!
教科書とノート持って帰ってくんの忘れた!」

「あひゃひゃ、おーちゃんアホー」

「お前だけには言われたくねーよっ!」


先帰って!って大声で叫びながら
学校まで猛ダッシュ。

途中で、はぁ…とひとつ重い溜め息。


「智っ!」


俺が走ってたら、
後ろから誰かに呼ばれた気がして。

止まると、誰かに後ろから抱きつかれた。


「っへ!?…あ、」

「だーれだ?」

「ぅえっ、えー…」

「智、まだわかんないのー?」


くふふ、と特徴のある笑い声と、
柔らかい腕。


「あ、ニノ?」

「くふ、あったり〜♪」


俺の背中に凭れ掛かったまま
具合良さそうにしてる。


「ニノ、重いから…」

「んー?ふふ、」


ニノの体を離しても離しても
くっついてくるから
諦めてまたひとつ溜め息。


「ねー、雅紀はー?」

「そこら辺にいると思うけど…」

「んぅー…俺と帰る約束したのにー…。」


頬を膨らませて、
また俺の背中に擦り寄ってくる。


「だぁーから!重いっつーの!」


限界がきて、
ニノを剥がせば涙目で
こっちを見てくる。


「智ひどい〜…智がまーくんと
一緒に帰っちゃうから〜…」

「わっ、悪かったよ!」


…ニノは雅紀が大好きで、
雅紀もニノが大好きで。

相思相愛ってヤツ?


「もーいいもんっ、
ずっとくっついてやる〜!」

「わわっ、やめろ!」



そんなゴタゴタを繰り返すこと
数十分。

ニノがなにかを思い出したように
あ、と小さく声を上げた。


「智、そう言えばなんで
学校方面に向かってるの?
忘れ物?」

「…を取りに行く最中で、
お前に絡まれてんだよ。」

「あ、ごめんごめん笑
じゃあいってらっしゃい。」


やっと取りに行けるー…って思えば、
天気が急変。

…なんだ俺…。


今日、ツイてねえなぁ…

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