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甘く、苦く

第74章 お山【miss your voice.】session 1

櫻井side



「じゃあねっ、翔くん!」

「ん、またね。」


ひらひらと手を振り、
大野の背中を見つめ
ひとつ溜め息をついた。


あぁ、ようやく…

彼 の 代 わ り を 見 つ け た 。


「…ふふっ…」


知る由もないだろう。

俺の気持ちなんて…。






「やっほ、翔くん。」

「…あぁ、大野か。」


窓の外を見ていたら、
不意に肩に手を乗せられた。

振り向けば、
俺に微笑みかける大野がいた。


「今日の面白い話はねぇ…
そうだなぁ…。」


うーんうーんと唸ってから、
閃いたように瞳を輝かせて、

「お昼、カレーパン食べた!」

と一言。


彼らしい、そう思って
つられ笑いをしていたら

「翔くんは?
楽しいことあった?」

「…いや、別に…。」

「え〜、いつもじゃん。
いつも誰といるの?」


…いつも、アイツといた。

それは過去形で、
もう元には戻れないくらい
離れてしまったアイツが。

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