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甘く、苦く

第75章 櫻葉【ANSWER.】






いつどこでも、

『雅紀はすごいわね。』

『あんなに小さかったのに〜…』

『全国大会だなんて誇らしいわ。』


……俺は?


いつも、

雅紀ばかり。

同じ兄弟なのに、
同じ環境で育っているのに。

どうしてこうも
扱いが違うんだ…?


いつも劣等感に苛まれている俺は、
家には居場所がなく、
朝方に帰ってくることもしばしばあった。

会いたくないから。

雅紀に会いたくないから。


俺は、俺じゃなくなりそうで、
潰れてしまいそうで怖かった。


『どうして翔は〜…』

『雅紀はもうそんなこと〜…』


そんなこと?

…雅紀と俺では、
信頼の規模が違う。


俺は男子生徒会長の立場だ。

勉強だってできる。

部活だって、スタメンだ。


…なのに、なんで?

どうしてこうも報われない?


全国大会の一歩手前での敗退。

生憎その日は雨だった。


家に帰れば、

『ガッカリしたわ。』

…お前に何が、わかるんだ。

『ほんとにベストを尽くせたのか?』

尽くしたけど、ダメだったんだ。

『兄貴、すごかった!』

…それさえも、俺の心には
深く突き刺さる。

そんな眼差しで見られても、
俺は全国に行けなかったんだ。


お前と違って、俺は。

いつもいつも、
お前のせいで、俺の人生はめちゃくちゃだ。

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