甘く、苦く
第75章 櫻葉【ANSWER.】
俺はこんなにもお前を
嫌っているのに、お前は
『兄貴、勉強教えて』
だなんて、
慕ってくれているんだ。
…もう、やめてくれ。
これ以上俺を悩ませないでくれ。
「…兄貴?」
「…生徒会の、仕事があるから
別の日にしてくれ。」
「…えぇ…でも…」
顔を背けたまま、
雅紀に返事を返す。
不服そうな、顔をしているのだろう。
「…あに──」
「出てってくれ。邪魔だ。
それと今日はその気分じゃない。」
「っ……ごめん、なさい…」
これで、いいんだ。
静かにドアの閉まる音がして、
大きな溜め息をついた。
そして俺はこれから、
雅紀を犯す妄想をして、
ひとりで抜くんだろう。
…なぜか?
雅紀の苦しむ顔が
見たいから。
俺から全てを奪った雅紀から、
今度は俺が奪ってやるんだ。
「っ、くっ、はぁ…」
…嫌い。
…好き。
…嫌い。
…好き。
…嫌い。
俺は結局、憎らしくも
雅紀が好きなのだろう。
恋心と気付いたのは、
劣等感を抱いた頃だった。
なにをしても、うまくいかない。
なにをやっても、余計空回り。
「…はぁっ、」
そんなとき、雅紀は大丈夫。
だなんてヘラヘラしてやがった。
苛立ちつつも、
俺はなぜかその顔に惹かれた。
どうしてか、
心奪われてしまった。
同性、兄弟…
そんな壁を超えて。
俺は、雅紀を愛してしまった。