
甘く、苦く
第75章 櫻葉【ANSWER.】
肩に頭を乗せてきて
ふぅふぅと息を整えて、
紅潮させた顔を俺に向ける。
『好き』
微かに口がそう動いた気がした。
どくん、と
胸が大きく鳴った。
「俺も好きだ…。」
雅紀の耳元で、
雅紀にだけ聞こえるように。
俺たち以外には
聞こえないように…。
「…うん。」
更に頬を赤らめ、
俺を見つめる瞳に
水分量が増した。
そんな姿も愛おしく、
抱いていた腕の力強めた。
「っ…あに…翔、ちゃん…」
「…離したくない…
ずっと一緒にいよう?」
雅紀の顔を窺うために
体を引き離すと、
今度は雅紀からくっついてきた。
好き、だなんて
そんな顔して言わないで。
ほんと、止まれなくなる──
胸の中に雅紀を収めたまま、
どれほど時間が経ったのだろう。
いつの間にか、
日付は跨いでおり、
時刻は丑三つ時だったのだ。
「…寝る?」
「ん、シャワー浴びる。」
「じゃあ俺も。」
「くふ、新婚さんみたい。」
「…結婚、できないけどな。」
俺がそう呟けば、
知ってるよ。だなんて
寂しそうな顔して雅紀は
部屋を出ていってしまった。
