甘く、苦く
第76章 末ズ【Please Kiss Me.】
幸せそうなふたりを見ていると、
こっちまで嬉しくなる。
それは…いいことなんだが。
明らかに、
ニノの様子がおかしかった。
…そりゃ、今まで親友で
一番仲良くしてた相手が
離れてったら。
まあ、落ち込むわな。
それがキッカケで、
俺はニノを目で追っていたんだ。
些細なことも、
すぐに気付いてしまう。
…リーダーは特に何も
変わっていないが。
そのせいか、
いつの間にか、ニノに惹かれていた。
理由はよくわからない。
気付いたら好きだった。
「ニノ、このあと飯でもどう?」
収録が終わったあと、
少し元気なさげなニノに
声を掛けたら。
「あっ、ずりぃぞ!松潤!
俺も芸能人がいっぱいいる
店紹介しろよっ!」
「はいはい、リーダーは
また今度ね。」
「ずりぃーぞっ」
ニノの方に向き、
どう?ってまた聞く。
俯いたまま、
いいよ。だなんて小さな返事。
それだけでも、嬉しかった。
「いつぶりだろうね。
ニノと飯なんて。」
「…さぁ。」
「ふたりっきりってのも、
なかなかないもんね。」
「…うん、そうだね。」
返ってくる言葉は、
暗く、落ち着いている。
…あぁ、やっぱり…
「ニノ、相葉くんのこと…」
「…っ………うん?」
一瞬だけ、
肩をびくつかせていた。
「もしかして、
好き、なのかな…?」
「………悪い?」
「…あ、いや、別に悪くはないけど…
最近、落ち込んでるみたいだし…」
「…そりゃ、そうでしょ…」
視線が、落ちる。
悪いこと、しちゃったかな…。
こんなこと、…失恋なんて、
抉り返さないで欲しいよな、普通。