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甘く、苦く

第76章 末ズ【Please Kiss Me.】






「…潤くんにはわかんないよ。」

「…うん、」

「ずっと…20年も、
想い続けてたのにさ…。
ずっと好きで、追い掛けてたのにさ…」


ニノの声が、
震えているのがわかった。

どうにかしてあげたいと思うものの、
運転席からは動けなくて。


黙って聞いていることしか
俺はできなかった。


「…ニノ。」

「…うん?」

「…あの、泣いて、いいよ…?
どうせなら飯、
また今度でもいいし。」

「…ふふ。
泣くわけないじゃん。
知ってたことだもん。

…相葉さんは、
いつも翔さんを見てたよ。」


切なそうに、
窓の外を見つめる。

ミラー越しに映ったその顔が、
言い表せないくらい儚くて。

思わず、息を呑み込んだ。


「…ニノ、」

「ん?」

「俺ん家、来ない…?」

「…え……?」

「あっ、…何言ってんだろ、ごめん」

「…いいよ、いいけど…
なんでまた、急に…?」


こちらを窺う視線と
重なり合い、
震えないように声を出した。


「ニノが傷付いてるの見るの、
俺まで、なんか悲しくなる。
メンバー、だし…」

「……ふふ。
…潤くん、優しいんだ。」

「あっ、当たり前だろ!」


少しだけ笑ったニノを見て、
ほっと安心した。

…それよりも、
優しいんだ。なんて言葉と、
少し潤んだ瞳で見つめられ、
俺のキャパはオーバーしそうだった。

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