
甘く、苦く
第76章 末ズ【Please Kiss Me.】
酒はどんどん進む。
呂律が怪しくなってきた
ニノにこれ以上飲ませるのは
危険だと思い、飲むのは中断。
俺も少し酔ってるし、
風呂は明日の朝でいっか。なんて
考えていたら。
「…ぃばさん…」
ニノの声がした。
…やっぱり、ニノは…。
ズキン、と胸が痛む。
──ダメだ。考えちゃ、いけない。
俺が辛くなるだけ。
片想いしてるだけ。
そんなの、今までだって
耐えてきたじゃないか。
…なのに、なんで今頃──
俺は、期待しちゃってんだ。
酔いが回り、
思考回路がおかしくなってるだけ。
寝てしまったニノに
ブランケットをかけ、
前髪を梳いてやる。
「あー…ばさん…」
…夢まで、
相葉くんが出てくるんだ。
俺なんて、出てこないだろうに。
ふわり、といつもに増して
顔を緩めたニノ。
…いつも、こんな顔して寝てんだ。
そっと、長い睫毛に触れる。
今まで、一度も触ったことのない場所。
「……ニノ…」
好きだよ。
誰よりも。
他の誰よりも、尽くしたいと思う。
…なのに、どうして───
ニノが…好きな人が、
自分を好きになるなんて、
奇跡としかいいようがないんだろう。
