
甘く、苦く
第76章 末ズ【Please Kiss Me.】
次に意識が呼び戻されたのは、
かなり遅かった。
…よかった、オフで。
そっと寝室を抜け出せば、
コーヒーのいい匂いが漂っていた。
…あれ、潤くん、今日お仕事じゃ
なかったかな…。
まさか、俺が起きるのを
待っててくれた──とか?
「…おはよ。」
「あ、おはよう。
よく寝れた?」
にっこりと微笑まれ、
不覚にも胸が高鳴る。
…あれ、おかしいな。
いつの間にか、
相葉さんへの気持ち、
俺薄れてない…?
そんな疑問は、
すぐに拭い取られる。
「ほら、もうそろそろ出来るから、
顔洗ってきな?
あ、昨日風呂入ってないし
シャワーだけでも浴びたら?」
「あ、うん。」
潤くんにタオルを投げられ、
だだっ広い廊下の隅を歩く。
…広いな。
俺の家の、
二倍くらいある気がするよ、ほんと。
壁に掛けられてる
ちょっとした小物も、
潤くんのものだと思うと
オシャレに感じる。
…これが、
潤くんマジックか。
