
甘く、苦く
第76章 末ズ【Please Kiss Me.】
迎えた宅飲みの日。
二回目ってこともあって、
以前よりもふたりとも落ち着いて、
リラックス出来ている。
そのせいか、飲むペースも早くなるし、
酔いも回りやすい。
シラフでは考えられないような
和を独り占め出来てると思うと
どうも嬉しくて舞い上がってしまいそうになる。
…ふふ。
まーたそんなに胸元開けてさ。
誘惑してるのに、早く気付かないかな。
俺じゃダメなのは、わかってるけど、
やっぱりどうしても和が好き。
これは紛れもない真実だから。
大分飲むペースも落ちてきて、
和がラグにごろんと横になる。
「ったぁー…ねむぅ…」
もう呂律も怪しくなってて、
起き上がる気配のない和。
その和の傍らにそっと近付き、
優しく髪の毛をすく。
夢と現の間をぼんやりと彷徨う顔。
俺の囁きは和に伝える、というよりも
独白に近い。
「お店だとさ…和を独り占めできないから、
俺少しだけ嬉しく思ってんだ。」
職業柄、ふたりだけで過ごす時間は
それほど多くないのだ。
和はいつも誰かといるから、
俺の入る隙なんてないんだ。
「だから、今日独り占めできて…
ちょっと嬉しいかも。
和が相葉くん好きなこと知ってるのに、
ごめんね…」
薄く微笑みながら、謝罪をする。
寝息を零す和の顔が少しだけ歪んだ気がした。
