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甘く、苦く

第77章 大宮【立ち入り禁止】

二宮side



ふわ、と大野さんからいい香りがする。

…香水なんて、つけてないのに。
すごく、いい匂い。
俺好みの少しだけ甘い匂い。

柔軟剤の匂いとか、そういうのじゃない。

大野さん、という人の匂い。


「ニノ、なにやってんの笑」

「…え?」

「すげー匂い嗅いでくるからさ。
俺臭い?笑」


だらしなく眉を下げて、
へへって笑うその顔。

あぁ、やっぱり───

「好きだよ。」

「え?」

「大野さんの匂いの話。」

ちょっとだけ悪戯っぽく笑って、
わざとらしく目を逸らした。

だってそうじゃないと、
俺の顔が赤いの、バレちゃうでしょ?

「ほら、食ったの運んでよ。」

「へいへい」

納得のいかなそうな顔で、
少し猫背気味に歩く後ろ姿を見て
俺はまた大野さんが好きになるんだ。

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