甘く、苦く
第77章 大宮【立ち入り禁止】
ソファーに座る大野さんの隣に腰掛け、
指をそっと重ねてみた。
もっと、大野さんのこと知りたいのに、
俺全然知らないんだよ。
…ねぇ、もっと教えて?
「大野さん。」
「ん?」
こっちを向く顔に、そっとキスをして。
「…なんとなく。」
顔を逸らす。卑怯な俺。
「なーんだよ。」
「なんとなく、したくなっただけ。」
そう、なんとなく。
なんとなく、キスがしたかった。
なんとなく、大野さんの隣に座りたかった。
なんとなく…だから。
「…今日ヤケに素直じゃん。
なんだ?今日なんかあったかぁ?」
「別に、ないけど。」
俺がなんとなく、
大野さんにしたかっただけ。
なのにそんなに顔近くまで持ってこられたら、
こっちがドキドキしちゃうでしょ。
「…バーカ。」
多分、聞こえてない。
それくらい小さな声だった。
まだまだ、大野さんは鈍感。