甘く、苦く
第77章 大宮【立ち入り禁止】
大野さんは運転できないから、
いつも助手席。
仕事に行く前は必ず寝てたけど、
最近は起きてくれている。
きっと俺が、退屈しないようにだ。
そんな優しいところも大好き。
俺のために気を遣ってくれてるんだ。
眠たくて仕方が無いくせに。
ふわぁ、と大きな欠伸をしつつ、
スマホをいじる大野さん。
「…なにやってるの?」
「んー?翔くんと連絡。」
珍しい。なんて思いながら、
何話してるのかな。なんて内容まで気にして。
でもさすがに、「何話してるの?」なんて
聞いてくる彼氏、怖いでしょ?
俺優しいから、そういうのは聞かない。
だって、個人的な用事だったら
話しずらいしね。
「ほら、もうすぐ着くから。」
「んー」
またひとつ、大きな欠伸をして
「ニノぉ」って甘えた声を出す。
「どうしたの?」って聞けば、
ん、って唇を突き出してくるから。
仕方ないな…なんて思いながら
頬に手を添えて優しく触れる。
こんな素直なところも好き。