甘く、苦く
第77章 大宮【立ち入り禁止】
俺はどうしても素直になれないから、
大野さんみたいに素直になりたいと
いつも思ってはいるんだけど…。
なかなか、それができないんだな。
“俺”という人間の理性を保つためには、
どうしても必要なことなんだ。
素直じゃないのにも、
嫉妬深いのにも、全部理由がある。
でも大野さんは、
そのへんを理解してくれるから、
深く入り込んでこない。
そんなところも、居心地が良くて
好きなんだ。
都合がいい、ってわけじゃない。
俺のことを好きでいてくれるし、
理解してくれるから。
なら相葉くんでもいいじゃん。
なんて大野さんに言われたこともあった。
…でも、だめなんだ。
だって俺は、“相葉さん”じゃなくて
“大野さん”が好きなんだから。
それは変えられないでしょ?
「───大野さん、行こっか。」
キスを済ませ、余韻に浸ったあと、
俺からひさびさに促してみた。
少しだけ不機嫌そうな顔をしてから、
もう一回。と言うように目を瞑る。
………可愛い。
「…最後だよ?」
大野さんの返事を待つよりも先に、
俺の体が動いていた。