
甘く、苦く
第77章 大宮【立ち入り禁止】
だから俺は、この笑顔を守りたいと思う。
一生かけてでも、守りたい。
この人だからこそ、
俺は、真剣に向き合える。
「ほら、早く行こ。」
「うんっ」
大野さんがにこにこと笑い、
助手席から降りる。
少しだけ乱れた髪を見て、
微笑ましくなる。
きっとスタイリストさん、
今日も困らせるんだろうな。
せっかちだから、早くしてとか
もうちょっと右側にとかなんとか。
…そんなところも、
好きだからいいんだけどね?
ちょっと頑固でせっかちなとこも、
それとは裏腹にふわふわした優しい笑みも
どれもこれも、大野さんだからいいんだ。
「…ニノ、遅い。」
ぶーっと唇を尖らせて、
不機嫌そうに俺を見る大野さん。
「ごめんごめん。
大野さんが可愛いからつい。」
「んなっ。可愛いとか言うな!
もう三十過ぎたおっさんだぞ!」
「はいはい 笑
俺にとってはアンタが一番可愛いの。」
耳元でコソッと言ってやったら、
途端に顔を赤くした。
