甘く、苦く
第78章 にのあい【Shine.】
「………ん、」
意識が舞い戻ってきたのは、
翌朝のことだった。
カーテンの隙間から差し込む光を見つめ、
ふぅ、撮ひとつ溜め息。
俺の誕生日、終わったんだな。
なんて当たり前のことを思いながら、
冷え切ったシーツを見つめる。
相葉さんは、いない。
きっと朝ご飯を作ってくれているか、
掃除しているかのどちらかだろう。
…俺の家なのに。
……結婚してたら、
こんな感じで毎朝起きるのかな。
うわぁ、だとしたら俺、
すげー幸せ者じゃん。
…なんてね。
来るはずのない日を思い浮かべ、
ぐーっと体を伸ばす。
昨日のことが嘘みたいに、
調子がいい。
いつもは痛い腰も、
今日はそれほどではない。
寝室の冷たいドアノブを回して、
リビングへ向かう。
「……相葉さん?」
…いないのかな。
「あーいばさん。」
……あ。
浴室の方から、シャワーの音がする。
きっと、朝風呂だ。
「…もう。」
まだお誕生日気分でいる俺は、
すこーしだけ拗ねていた。