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甘く、苦く

第80章 にのあい【愛 think so.】






シャワーの心地よい音が響く浴室。

ふぅ、と一息をついて
ニノが湯船に肩まで浸かる。


「…ねぇー、まぁくん、」

「んー?」

「……まーくんはなんで、
キスマークつけてくれないの?」

「へ?」


急に可愛い声出したと思えば、
なんてこと言い出すんだか。


「…なんで?」

「いや。あの…キスマークって、
独占欲とか…そういうので、つけるって…
ネットで、たまたま見て…」

「ふぅん…」


シャワーを止めて、
ニノをちらっと見てみたら、
顔を真っ赤にさせてこっちを窺っている。


「なんで、そんなの気にするの?」

「いや、だって…あの…
別に気にしてなんかないけど…」


ぷいっと視線を逸らして、
ぷくぷくと泡を水面に浮かばせる。


「あのさ、キスマークって
皮下出血じゃなかったっけ?

…俺はどんな形でも
ニノを傷付けたくないの。」

「…そう、なの…?」


また目が合って、
ちょっとの沈黙。

動いたのは、俺の方からだった。


「キスマーク、つけて欲しい?」

「…いや、別に…」

「そう?
じゃあ俺もう上がる。」

「…っ……」


ニノを置いて、浴室から出た。
ひとりで寝室まで向かう間、
ニノが追いかけてくれたらな、なんて
自惚れながら。

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